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事業等のリスク

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 当社グループの事業等に係るリスク要因になる可能性のある重要事項は以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものでありますが、以下の記載は当社グループの事業等及び当社株式への投資に係るリスクを全て網羅するものではありません。

主要顧客への売上依存度について
(リスク顕在化の可能性:小、経営成績等の状況に与える影響:大)

 当社グループの主要顧客は、日産自動車株式会社であり、同社向けの売上実績は下表のとおりとなっています。日産自動車株式会社への売上依存度は、継続的に高い率となっているため、同社との取引状況に何らかの変更があった場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

相手先 2024年6月期 2025年6月期
金額(百万円) 総売上に占める割合 金額(百万円) 総売上に占める割合
日産自動車株式会社 12,351 8.8% 12,842 8.7%
日産自動車グループ(注) 20,292 14.4% 21,086 14.3%

(注)日産自動車グループの販売実績は、日産自動車株式会社、日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社、及び全国の日産自動車販売会社への売上実績を合計したものに加え、中国の東風汽車有限公司及び中国のその他日産自動車関係会社等への売上実績を合計したものであります。

 日産自動車株式会社とは、車両輸送作業や新車点検整備作業等の個別の業務ごとに締結された「車両運送委託契約書」や「請負基本契約書」等の契約を締結していることに加えて、日産自動車株式会社より「Nomination Letter」に署名をいただいており、2027年3月末まで継続されることが基本合意されております。また、それ以降も継続に向けた協議をしております。これまで日産自動車株式会社が提示した目標を達成しており、今後も業務品質の維持向上に努めることによって契約の更新を続けてまいる所存です。
 しかし、諸事情により日産自動車株式会社との取引が継続できなくなった場合は、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
 当事業リスクに対する対応策としては、輸送システムの連携などを推進することで、日産自動車株式会社との関係強化に努めてまいります。

特有の法的規制に係るもの

貨物自動車運送事業法等の規制について
(リスク顕在化の可能性:小、経営成績等の状況に与える影響:大)

 当社グループの主要な事業活動である車両輸送サービスの前提は、一般貨物運送事業者としての貨物自動車運送事業法第3条に基づく一般貨物自動車運送事業認可(関東運輸局長(関自貨2)第1992号ほか)と、貨物運送利用事業者としての貨物利用運送事業法第20条に基づく第二種貨物利用運送事業許可(総合政策局複合貨物流通課長(国総貨複第6号の4-25))であり、当該許認可には有効期限が設定されていません。
 貨物自動車運送事業法や貨物利用運送事業法では、許認可の基準、運送約款の作成・認可、運行管理者の選任等が定められており、同法第33条等に許認可取消事由が規定されています。
 また、当社グループの事業運営においては、厚生労働省告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(以下「改善基準告示」)は行政告示(指針)であり、直接罰則を規定する法令ではありませんが、告示に基づく違反が確認されれば、労働基準監督署等による監督・是正指導や行政処分が行われる可能性があり、その結果として許認可の維持に影響が生じるおそれがあります。2024年4月1日施行の改正では、時間外労働の上限規制や拘束時間の短縮等が導入されており、当社における遵守が一層重要となっています。
 現時点において、当社グループはこれらの許認可の取消の事由に該当する事実や改善基準告示の重大な違法基準はないとしています。
 当社グループの主要な事業活動の継続には前述のとおり一般貨物自動車運送事業認可及び第二種貨物利用運送事業許可が必要ですが、今後、法令違反等によりこれらの許認可が剥奪された場合には、主たる事業の一部あるいは全部を行うことができず、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。これに対応するため、ドライバーの増員、勤務体制の見直し、デジタルタコグラフ等の労働管理システムの導入・更新、車両・設備投資等の対策を進めており、これらは人件費や設備投資等のコスト増要因となる可能性があります。また、当社は法令に基づき必要な運行管理者を選任しており、定期的な教育および監査を実査することで遵守体制の維持に努めています。
 さらに、今後、貨物自動車運送事業法や貨物利用運送事業法、改善基準告示の内容変更等が行われた場合には、新たなコストが発生し、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

排気ガスの抑制に関する諸規制について
(リスク顕在化の可能性:中、経営成績等の状況に与える影響:小)

 当社グループの営む事業のうち国内自動車関連事業及び一般貨物事業につきまして、2002年10月1日から「自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」(自動車NOx・PM法)が施行され、また、2003年10月1日から東京都の「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」をはじめとするディーゼル車の走行規制条例が、首都圏で施行されたのを皮切りに、全国へ拡大されております。当社グループといたしましては、各種規制に対して、新車代替又は排ガス対策装置を装着することを進めておりますが、今後、規制の内容の強化等が行われた場合には、更なるコストが発生し、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

道路交通法の規制について
(リスク顕在化の可能性:小、経営成績等の状況に与える影響:中)

 当社グループの輸送業務については、道路交通法を遵守し、人命を尊重し交通安全に最善を尽くしております。しかし、重大な交通事故等を起こしてしまった場合には、当社グループの信頼が失われ、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

道路法の車両制限令の規制について
(リスク顕在化の可能性:小、経営成績等の状況に与える影響:中)

 当社グループの車両運搬用のセミトレーラにつきましては、道路法の車両制限令により全長の制限及び積載車両の長さや高さや重量等の制限が定められております。車両運搬用セミトレーラは、本来商品車(輸送依頼を受けた車両)を6~7台積載できることを前提に製造されておりますが、最近は商品車のサイズが大型化したことに伴い、積載時にセミトレーラのサイズに収まらず、はみ出してしまう可能性があります。また、自動車の電動化にともない重量が増しており、セミトレーラの重量制限を超過してしまう可能性があります。
 当社グループでは、各物流拠点での配車時において、制限値を超えないように小型車を混載させ、積載時に調整を行っております。しかし、小型車の混載が困難な新車輸送に関しましては、積載台数を減らさざるをえない場合もあります。今後も、適正な輸送料金への改定の交渉に取り組みますが、規制の内容の変更等が行われ、輸送効率の低下に伴うコスト増分を輸送料金に反映できない場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

労働基準法等の規制について
(リスク顕在化の可能性:小、経営成績等の状況に与える影響:中)

 乗務員の労務管理は、「労働基準法」等に基づき実施しています。働き方改革関連法に伴う残業時間規制の強化や、労働安全衛生法改正に伴うメンタルヘルス対応義務化等により、労働行政による監督が強化されており、従業員の健康管理やきめ細かな労務管理が一層求められています。
 自動車運転業務についても改善基準告示の基準が実務に影響を与えており(改善基準告示の詳細は項目「貨物自動車運送事業法等の規制について」を参照)、特に繁忙期となる3月には従来どおりの売上収益を維持できない可能性があります。今後の規制強化や法適用の動向によっては、さらなる勤務体制の見直しや人員確保等に伴うコスト増加が懸念されます。これを踏まえ、当社では繁忙期対策として臨時雇用の計画、協力会社への業務委託枠の確保、乗務員の勤務体制変更等を検討・実施しています。今後の規制強化や法適用の動向によっては、勤務体制の見直しや人員確保に伴うコスト増加が懸念されるため、政策変更等が発生した場合には関係部署で影響試算と対応計画を速やかに作成・実行してまいります。

派遣法等の改正について
(リスク顕在化の可能性:小、経営成績等の状況に与える影響:小)

 「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下、労働者派遣法)」は2012年の改正に続き、改正時の附帯決議等により2015年にも一部改正されました。改正においては、雇用安定措置の義務化、個人単位及び事業所単位の期間制限等が織り込まれています。派遣先企業では、アウトソーシングや直接雇用への切り替えなどの動きも見られ、派遣業界の競争は更に厳しさを増すものと考えられます。これまでも労働・雇用環境の変化に応じて労働者派遣法は改正されており、今後の改正などにより事業環境が変化した場合には、ヒューマンリソース事業において派遣事業を展開している当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
 当法的規制に係る事業リスクの対応策につきましては、関係部署に対する、貨物自動車運送事業法や労働基準法などの法令順守指導・教育に努めると同時に、その他の法的規制につきましては、情報の早期収集と迅速な対応並びに情報開示に努めてまいります。また、監査部による特別監査などを通じてコンプライアンス遵守意識を高めてまいります。

人材の確保について
(リスク顕在化の可能性:中、経営成績等の状況に与える影響:小)

 人材確保・育成を経営上の重要項目として取り組んでおりますが、少子高齢化の進行に伴う人材不足及び景気回復に伴う人件費の高騰などにより必要な人材の確保ができない場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。特に国内自動車関連事業における車両輸送事業やヒューマンリソース事業における送迎事業や派遣事業を担っている「自動車運転の職業」は有効求人倍率が高止まりしていることから、人件費高騰のリスクを抱えております。当事業リスクに対する対応策としては、数年前から乗務職の新卒を採用し始めるなど、乗務職確保と高齢化に歯止めをかける施策を行っております。

サイバーセキュリティに関するリスク
(リスク顕在化の可能性:中、経営成績等の状況に与える影響:大)

 当社グループは、事業運営において受注管理システム、配車管理システム、会計システム、労務管理システム等の基幹システムを活用しており、これらのシステムには顧客情報、運転者や役職員の個人情報、運行データ等の重要な情報が蓄積されております。近年、ランサムウェア攻撃、標的型攻撃、DDoS攻撃等のサイバー攻撃が高度化・巧妙化しており、当社グループにおいてもサイバー攻撃を受けるリスクが存在します。
 万が一、サイバー攻撃により重要なシステムが停止した場合、事業運営に支障が生じ、サービス提供の継続が困難となる可能性があります。
 また、個人情報や機密情報の漏洩が発生した場合、顧客や取引先からの信頼失墜、損害賠償請求、監督当局からの処分等により、当社グループの業績及び財政状態並びに社会的信用に重大な影響を及ぼす可能性があります。さらに、システムの復旧や再構築、セキュリティ強化対策等に要する費用負担も、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
 当該リスクに対する対応策として、当社グループでは、ファイアウォールやウイルス対策ソフトの導入、システムへのアクセス権限管理の徹底、定期的な脆弱性診断の実施、重要データのバックアップ体制の構築等の技術的対策を講じております。また、全役職員を対象としたサイバーセキュリティ教育の定期実施、標的型攻撃メール訓練、インシデント発生時の対応手順の整備等により、人的・組織的対策の強化を図っております。さらに、サイバー攻撃によるシステム停止等に備えた事業継続計画(BCP)の策定、サイバー保険への加入検討等により、リスクの軽減と影響の最小化に努めております。
 現時点において、当社グループの事業運営に重大な影響を及ぼすサイバー攻撃の被害は発生しておりませんが、サイバー攻撃の脅威は日々進化しているため、継続的なセキュリティ対策の強化に取り組んでまいります。

自然災害等の大規模災害による被害
(リスク顕在化の可能性:小、経営成績等の状況に与える影響:大)

 地震、噴火、津波、台風等の自然災害や火災等の事故及び通信ネットワークを含む情報システムの停止等により、当社グループの事業活動が停止するような被害を受けた場合には、当社グループの業績に重要な悪影響を与える可能性があります。当事業リスクに対する対応策としては、車両輸送における物流拠点(CSセンター)においては、日本全国36箇所に亘って展開しているため、どこか特定のエリアや拠点が壊滅的な打撃を受けたとしても、近隣の拠点でバックアップができる体制を構築しております。

保有資産の価格下落に関するリスク
(リスク顕在化の可能性:中、経営成績等の状況に与える影響:中)

 当社グループが保有している営業債権及びその他の債権(17,431百万円)、棚卸資産(3,137百万円)、有形固定資産(22,468百万円)、のれん及び無形資産(5,306百万円)について、収益性の低下などによって、評価損の計上や減損処理を行うこととなった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
 当該事業リスクに対する対応策としては、営業債権については、顧客ごとの与信管理の徹底と情報管理の迅速性を重視すること、棚卸資産に関しては、見込み発注の縮小化と在庫管理を徹底すること、有形固定資産及びのれん・無形資産に関しては、投資前に事業収益性の見極め精度を向上させ、投資後は損益管理を徹底し、収益性低下が認められた場合は、早急にリカバリープランを導入することでリスクの顕在化を抑制してまいります。
 なお、当連結会計年度において、国内自動車関連事業における株式会社ソウイングは、取得時に前提とした事業環境に乖離が生じたことから、のれんの一部減損損失を認識しております。

中古車輸出事業に関するリスク

 子会社である株式会社ワールドウインドウズにおけるマレーシア向けの中古車輸出事業におきまして、為替レートの変動、法的規制の変化、債権の回収、自動車運搬専用船の船枠確保に関するリスクがあります。

為替レートの変動について
(リスク顕在化の可能性:大、経営成績等の状況に与える影響:小)

 当社グループは、マレーシアの中古車輸入業者との取引に関しては円建てを基本としており、為替ヘッジは行っておりません。しかしながら、急激に円高になった場合、日本から輸出する中古車の価格競争力がなくなり、当社グループの輸出台数が減少するによって、業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

法的規制の変化について
(リスク顕在化の可能性:小、経営成績等の状況に与える影響:中)

 マレーシアにおきましては、自動車産業保護政策やマレー系民族優遇政策を基にして中古車の輸入関税や輸入条件が定められておりますが、その政策が変更された場合、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

債権の回収について
(リスク顕在化の可能性:大、経営成績等の状況に与える影響:小)

 当社グループでは、取引を開始するにあたって信用調査を実施し、会社毎に与信枠を設定して継続的に販売状況をモニタリングすることなどによって与信管理に努めておりますが、取引先の倒産や支払い遅延などが発生した場合、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

自動車運搬専用船の船枠確保
(リスク顕在化の可能性:大、経営成績等の状況に与える影響:小)

 当社グループは、日本からマレーシアへ中古車を輸出するにあたって、主に自動車運搬専用船を利用しておりますが、その船枠が空いているかどうかは新車の輸出動向に左右されます。新車の輸出が旺盛で自動車運搬専用船の船枠の確保ができない場合、在庫車の滞留により資金繰りに影響を及ぼす可能性や、輸出台数を制限することにより売上収益に影響を及ぼす可能性があります。

気候変動に関するリスク
(リスク顕在化の可能性:中、経営成績等の状況に与える影響:中)

 当社グループが保有している営業債権及びその他の債権(17,431百万円)、棚卸資産(3,137百万円)、有形固定資産(22,468百万円)、のれん及び無形資産(5,306百万円)について、収益性の低下などによって、評価損の計上や減損処理を行うこととなった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
 気候変動に伴う移行リスク(政策・規制の強化、技術変化、市場・顧客ニーズの変化、評判リスク等)や物理的リスク(異常気象の激甚化・頻発化、気温上昇や降水パターンの変化等の長期的な気候パターンの変化)により、当社グループの事業活動や業績に影響を与える可能性があります。これらのリスクの詳細については、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。
 当事業リスクに対する対応策としては、気候変動への対応(TCFD)の枠組みに基づき気候関連リスクの特定・評価を実施し、リスクの軽減に向けた取組みを推進しております。物理的リスクについては、既存の自然災害対策と連携し、全国に展開する物流拠点における事業継続体制の強化を図っております。移行リスクについては、環境負荷低減に向けた技術革新や事業プロセスの見直し等を通じて、持続可能な事業モデルの構築に取り組んでおります。